M&Aに関するコラム

従業員にとってのM&A

2019.02.14

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M&Aは、とかく経営者やオーナー間での話になりがちですが、実際は事業や企業の売買であり、多くのケースでは従業員(雇用関係)も売買の対象になっています。
買い手側からすれば、有能な従業員が残ってくれない場合、事業の枠だけをM&Aすることと同義になってしまいます。売り手側からすれば、これまで雇用してきた従業員の先行きについて不安を覚えるものです。スモールM&Aでもその点は例外ではなく、むしろ経営者と従業員の距離が近いスモールM&Aこそ、従業員に対する配慮が必要になってきます。
では当事者である従業員にとって、M&Aとはどのように捉えられるものなのでしょうか。基本的に共通していることは「従業員は強い不安感情を持っている」ということです。不安感情はマイナス思考を生み、「M&Aは自分にとって良くないこと」と思いがちです。今回はM&A成功に不可欠な“従業員に対するM&Aの説明・理解促進”を考えていきたいと思います。

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業務に関して言えば、今まで取り組んでいる業務だけでなく、他の業務に取り組まされるのではないか、業務量が増加するのではないか、などといった不安が出てきます。また、処遇についても大きな不安材料の一つです。M&Aの買い手のうち、M&Aに慣れていない企業は、従業員に対する説明として「未定」という言葉を使いがちです。会社が買われることにより、自分たちの処遇を不安に思う従業員にとって「未定」という言葉は不安を助長する言葉になります。特に中小企業の従業員ですと、転職しようにも優良な転職先を見つけることが困難なケースもあります。「当面は今まで通りの業務・処遇を継続する。」と説明があったとしても、買い手企業のことをよく理解していない売り手側従業員からすれば、不安を拭い去るのに十分な説明とはいえません。M&A後も適切な雇用関係を築くためには、買い手企業のことをよく説明し、理解を得ることが必要になるでしょう。
その為には、然るべきタイミングで買い手企業から従業員に対しM&Aに対する思いを十分に語ることが効果的です。「自分たちはなぜM&Aを行うのか」「M&Aの先にどんな未来を描くのか」「売り手企業のどこに魅力を感じたのか」「売り手企業の従業員たちに何を期待するのか」「売り手企業の従業員たちに何を与えるのか」「人事に対する考え方」など、これからの雇用主になる買い手企業から直接説明を受けることが、不安解消につながる手法のひとつになります。

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また、見落としがちなのが売り手企業の取引先に対するケアです。売り手企業の取引先は、M&Aにより自社との取引がなくなるのではないかという懸念が生まれます。それらの問い合わせは売り手企業の担当者(=従業員)が受けることとなり、通常業務以外のストレスがかかることになり、それらも従業員にとっての大きな負担になるでしょう。M&A後に、取引先からの問い合わせ窓口を設置する等の対応を検討することも良いでしょう。

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まとめとして、従業員の雇用を継続したまま行うM&Aにおいて、従業員ケアを行うポイントは、
①「未定」という言葉を可能な限り使わない
②買い手企業から従業員に対しM&Aに対する思いを説明する
③M&A実施に伴い従業員にかかってくる負担を出来るだけ軽減する取組を検討する
という3点になります。その他にも注意すべき点は多くありますが、M&Aはケースバイケースで、同じ案件というのは1つもありません。売り手企業と買い手企業のフォロー次第で、従業員が不幸になるM&Aもあれば、新しいチャンスを得て活き活きと働くM&Aもあります。従業員にとっても良好なM&Aにする為に、出来ること・やるべきことは沢山あることを知っておきましょう。

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